2022.02.15 13:45七月二日 海の話「海」といえば多くの人はどのようなものを思い浮かべるのだろうか。白い砂浜に青と緑のグラデーション。青く澄んだ空、もしくは真っ赤な夕日、そんなところか。 私にとっての海は違った。黒い砂と黒い海、厚い雲で白くなった空。それから短い水平線。太陽は海に沈むものではなく海より出ずるものだ。...
2022.02.15 13:44七月一日 美術室の話 西陽が射す放課後の美術室。部員が二人しかいない活動。顧問の教員もおらず、外の音もよく聞こえず、まるでこの世界中には、僕と部長の二人しか存在していないかのようだ。 今のこの状態が始まってからどれくらいの時間が経ったのだろう。本日の活動内容はお互いの顔のデッサン。絵画にも造形にも明...
2021.07.01 15:51一日一創作小説1_6月※オリジナル作品 ※BL六月二四日 夕立の話六月二五日 オムレツの話 六月二六日 昼寝の話 六月二七日 湿気の話 六月二八日 朝の話六月二九日 放課後の話六月三〇日 あじさいの話
2021.07.01 15:46六月三〇日 あじさいの話 ある古い街にあるカフェ。木製の扉を開けると、カランカランと小気味の好いウェルカムベルの音が響いた。一足踏み入れて息を吸うと、マスターオリジナルのブレンドコーヒーと焼きたてのワッフルの匂いが鼻腔をくすぐる。客が運ぶ雨水が染みたニス塗りの床は、歩くたびに少し軋む。私は、バーカウンタ...
2021.07.01 15:44六月二九日 放課後の話 中間試験が終わり、放課を告げるチャイムが鳴り響いている。我先にと帰って行く人、久しぶりの部活に向かう人、意味もなく教室に残っている人。「この後ファミレス行こう」とか「テストどうだった」とか賑やかな声が聞こえた。テスト期間の放課後はずっと静かだったから、ギャップもあってより活気が...
2021.07.01 15:44六月二八日 朝の話 寝室の窓。閉じられた厚手のカーテンの隙間から朝陽が射し込む。それ以外に光はないから余計に眩しく感じられた。露出していた肩口が肌寒くて、毛布を引き寄せ頭までかぶった。薄く目を開けて光に目をならしながら、ヘッドボードに置いた携帯電話に手を伸ばそうとしたところで、あることに気がつく。...
2021.07.01 15:43六月二七日 湿気の話 じめじめ、べたべた。こうも湿度が高いと何をする気も起きない。気温はそんなに高くないが、体感温度は三〇度くらいだ。Tシャツと下着だけ着た格好なのに、露出した肌にはずっと何かがへばりついているような感覚がするし、癖毛はうねり顔を動かすたびにまとわりつく。汗をかいているとかならシャワ...
2021.07.01 15:42六月二六日 昼寝の話「今日は一日快晴でしょう」 休日にも関わらず早くに目が覚めてしまい、なんとなくつけたニュース番組でお天気キャスターが言っていた。梅雨時に一日中晴れる日なんてとても貴重だ。「布団、干そ」 思い立った俺は自分の部屋に行き、掛布団のカバーとシーツを剥がすと洗濯機に入れる。我が家の洗濯機...
2021.07.01 15:41六月二五日 オムレツの話 何気なく「今日何食べたい?」って帰宅前の同居人にメッセージを送ってみたところ、いつもは漠然としたことしか返ってこないのに、珍しくちゃんとしたリクエストがあったので、今日の夕飯はオムライスにした。 みんなはどんなタイプが好き? 俺はナイフで切って広げるふわふわとろとろなオムレツと...
2021.07.01 15:40六月二四日 夕立の話「うわー。どしゃ降りだ」 夕飯の買い出しを終え、俺とともにスーパーを出た同居人のセイが言った。家を出るときは晴れていて、雨が降るなんて思っていなかったから、二人とも傘は持っていない。傘を買って余計な出費をするのも嫌だ。「どうするよ、セイ。止むまで待つか?」 洗濯物は取り込んできた...