六月二六日 昼寝の話

「今日は一日快晴でしょう」

 休日にも関わらず早くに目が覚めてしまい、なんとなくつけたニュース番組でお天気キャスターが言っていた。梅雨時に一日中晴れる日なんてとても貴重だ。

「布団、干そ」

 思い立った俺は自分の部屋に行き、掛布団のカバーとシーツを剥がすと洗濯機に入れる。我が家の洗濯機は乾燥機付きだけど、布団は天日干しのほうが気分がいいから洗うだけにした。洗っている間に掛布団と敷布団はベランダに出してしまう。

「さてと、セイの布団も干したいんだけどな……」

 今日は出かける予定があるって言っていたから、そろそろ起きてくるだろうか、と思っていると、ちょうどセイが部屋の扉を開け、寝癖でぼさぼさの頭を掻きながら出てきた。

「おはよう。布団干したいからシーツとか外しておいてくれる?」

「おっけー」

 あくび混じりの返事をして部屋に戻って行ったかと思えば、シーツの塊を脱衣所に出し、布団はベランダに干してくれた。それから、さっさと支度をして出かけてしまった。

 朝食の片付けをしているとき「ピー」という音が鳴って洗濯の終了が告げられる。真っ白のシーツを一回張ってから物干し竿にかけた。程よく風も吹いていて、気持ちのいい陽気だ。このまま、窓を開け放って掃除でもしようかな。

***

 ため込んだ家事の消化に時間を費やしていたらあっという間に火が傾いてしまった。ようやく一息つけると思っていたのに、干しっぱなしの布団のことを思い出したので、冷えてしまう前に慌てて取り込む。腕いっぱいに抱え込んだときにいい匂いがした。お日様の匂いってやつだ。干したての布団って、どうしようもなく無意味に顔を埋めて匂いを嗅いでしまう。前にそうやって、一人でにやにやしているところをセイに見られてドン引きされたことがあった。しかし、誰になんと言われようとこれだけはやめられない。

 各々の部屋でベッドメイキングをする際には、流石に衝動を我慢したけど、最後の最後、あいつの掛布団を整えたところで思わず布団に倒れこむ。匂いもそうだけど、手触りも寝心地も俺のよりも断然いいんだ。

「あー、このまま寝ちゃいそう」

 早起きをしたのもあって、だんだんと意識が沈んで行く……。

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