六月二七日 湿気の話
じめじめ、べたべた。こうも湿度が高いと何をする気も起きない。気温はそんなに高くないが、体感温度は三〇度くらいだ。Tシャツと下着だけ着た格好なのに、露出した肌にはずっと何かがへばりついているような感覚がするし、癖毛はうねり顔を動かすたびにまとわりつく。汗をかいているとかならシャワーでも浴びればすっきりするのだろうけど、敵は湿気だから困った。風呂に入ったら状況は悪化するのは確実。
「なんもする気にならねー」
ソファに寝転び、ミルク味のアイスキャンディーを齧りながら独り言ちる。肘掛に乗せた脚をばたつかせていると足首を摑まれて、
「行儀悪いからやめろって。服も着ろよ」
と同居人に言われてしまった。
「最低限は着てるだろ。もう湿気が鬱陶しすぎて身に纏いたくないの」
ぶすくれてみせると摑まれていた脚を床に下されたので、仕方なくそのまま起き上がった。気休めに点けていた扇風機の風が当たって溶けたアイスキャンディーの雫が指先に伝う。
「そんなにならエアコン点ければいいのに。いくらかマシになるだろ」
「まだ掃除してないから、使うのはちょっと気が引けるんだよな」
べたついた指を舐めて答えた。かび臭い風は浴びたくない。毎年準備をしよう、しようと思っているうちに梅雨になり、梅雨が終わって、夏になっている。
食べ終わったアイスキャンディーの棒を咥えて揺らしていると、同居人が二人掛けのソファにどっかりと座ってカップアイスを食べ始めた。
「お前、体温高いんだから近くに座るなよ。余計に暑くなるから」
離れるように端に寄ったのに、肩がくっつくまで近づいてくる。アイスと扇風機に寄って、心なしか温度が下がった体にじわじわと熱が広がる。移動しようと思って立ち上がったら、銀色のスプーンで掬ったアイスを差し出されたので、座り直して開けた口を向けた。
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